泡消火設備の設置基準概要の解説

泡消火設備の用途と構造の特徴、設置に関する消防法に基づく設置基準規定、泡消火薬剤PFOS規制の解説。

◆消防法に基づく泡消火設備の設置基準概要の解説

 泡消火設備とは一般の火災とは異なり可燃性の液体類を含む火災などが発生した際に安全に消火活動を行うことができる移動式の消火器具及び固定式の消火設備類のことじゃ。

 可燃性の液体類の代表と言えば油やガソリンなどの液体が該当する。

 揚げ物の料理をしている際に油に水を注ぐと油が大きく飛び散る事はご存知じゃろう。

 このように油と水は反発しあう性質を持っておる為、油火災、ガソリン火災などでは水消化器やスプリンクラー設備などによる消火活動を行うことは危険じゃ。

 その為、油火災などで使用される消火設備は火災そのものを包み込み酸素の窒息作用で火災の拡大を防止する泡消化設備の設置が求められる訳じゃ。

◆泡消火設備の構造及び発泡倍率・膨張比別の用途について

 泡消火設備とは、消火設備の一種で泡ヘッドから泡消火薬剤を放出することで火災の拡大を防止する消火設備の事です。

 水による消火では爆発を起こしたり火災の拡大を防止しきれないような油火災や可燃性のガソリンなどによる火災の拡大の防止、及び初期段階での消火を目的として泡消火設備が設置されます。

 ここでは泡消火設備の構造や主な用途、種類別の特徴について解説します。

◆泡消火設備の主な用途・特徴

 泡消火設備とは、消火設備の一種で泡ヘッドから泡消火薬剤を放出することで火災の拡大を防止する消火設備の事じゃ。

 泡消火設備の設置は消防法による分類の場合、B火災(油火災)に適した消火方法であり主な用途としては可燃性のガソリンによる火災が発生する危険性をもつ駐車場(主に地下駐車場等)で使用されておる。

 ガソリンや調理場の加熱された油は通常の水による消火活動を行うと、「水と油」という言葉があるとおり反発しあい逆に油が拡散することで火災の拡大をもたらす危険性を持っておる。

 その為、駐車場内に設置される屋内消火栓設備やスプリンクラー設備による消火方法では対応できないような油火災等の火災の発生の可能性が懸念される場所に泡消火設備が設置されることになる。

 尚、泡消火設備は構造的にはヘッドからの散水を行うスプリンクラー設備と類似しておるが、配管の中間に後述する混合装置や水源と合わせて泡消火剤の貯蔵タンクなどの設備を別途設置する必要がありスプリンクラー設備とは対象となる火災の種類が異なる点がポイントじゃ。

◆泡消火設備の構造

 泡消火設備の設置は複数の消火設備と連動させることで機能する総合型の固定式の設備が主流です。

 また、後述する膨張比によって消火対象となる建築物や施設、設備等は異なります。

 ここでは主な泡消火設備の構造と各部位の仕組み・働きについて一覧表で解説します。

【泡消火設備の主な構造】
番号 装置名・名称 仕組み・働きの説明
@ 泡ヘッド・フォームヘッド 泡消火剤の放出口
A 配管 泡消火剤と貯蔵タンク・水源をつなぐ配管設備
B 貯蔵タンク 泡消火剤の貯蔵タンク
C 起動装置 手動式と自動火災報知設備に連動する自動式がある
D 混合装置 泡消火剤の元となる溶液と水を混合する装置
E 加圧送水装置 加圧式の組み上げポンプ
F 一斉開放弁 起動装置と連動して起動する
G 流水検知装置 混合装置Dと一斉開放弁F間の配管に設置される
H 感知器 主に固定式、自動火災報知設備と連動する
I 非常用電源 火災や地震などで電源供給が絶たれた際に稼動する電源装置
J 貯水槽 水の供給を行う・地下から組み上げる方式が一般的
K 自動火災報知設備 泡消火設備の起動と連動する装置(自動式)

 Kの自動火災報知設備等の火災信号を受信するシステムは手動式の場合は設置されていないケースもあり、また遠隔操作用の信号機受信機が設置されているケースもあり設置されている状況によって異なりますので、泡消火設備の主な構造の目安となります。

◆泡消火設備の泡ヘッドの構造

 泡消火設備に取り付けられる放出口には泡水溶液の体積の膨張比率によって膨張比率が20倍以下の低発泡放出口と80倍以下の中発泡放出口、そして80倍以上の高発泡放出口に分類されておる。

 また高発泡放出口の膨張比は更に250倍以下、500倍以下、500倍以上の3種に分類される。

 混合装置で生成された泡水溶液は泡ヘッド部分にある空気口から多くの空気を取り込み空気を含ませて膨張させた泡状態を作り出しながら放出口から泡消火剤を放出する訳じゃ。

※膨張比=発泡倍率とも呼ぶ

【泡消火設備の主な構造と種類一覧表】
番号 放出口・泡ヘッドの種類 膨張比・発泡倍率
@ 低発泡放出口 20以下
A 中発泡放出口 20以上〜80以下
B 高発泡第1種 80以上〜250以下
高発泡第2種 250以上〜500以下
高発泡第3種 500以上〜1000以下

◆低発泡泡ヘッドの構造と特徴

 低発泡の泡ヘッドは、泡ヘッド部分の空気口から大量の空気を取り込み泡水溶液をヘッドから放出させる。

 泡ヘッドが網目状、メッシュ形状となっているのは空気の取り込みを行う構造となっておる為じゃ。

 駐車場や危険物の貯蔵庫、可燃性の液体貯蔵設備、飛行機の荷物置場やエンジンルームなどに使用されている泡ヘッドは低発泡の泡ヘッドが主流じゃ。

 尚、低発泡放出口の多くは固定式泡消火設備じゃがノズルを操作して消火活動を行う移動式のタイプも製造されておるのじゃよ。

◆中発泡の泡ヘッドの構造と特徴

 中発泡ヘッドは、低発泡と高発泡のちょうど中間の用途で使用される泡ヘッドじゃ。

 可燃性の液体を扱う施設では移動式のノズル操作で放出を行うタイプと固定式の消火設備が利用されておる。

◆高発泡放出口の用途と特徴

 高発泡の泡ヘッドは主に大型の可燃性の液体を扱う施設や設備などに設置されておる。

 危険性の高い大型の可燃性液体や危険物を取り扱う施設等で発生する火災に対し、複数の放出口から大量の泡を一気に放出し建築物や対象設備を泡で埋め尽くし酸素濃度を低下させることで火災の拡大を防止し泡水溶液に含まれる水で同時に冷却作用をもたらす仕組みじゃな。

◆PFOS泡消火薬剤を含有する泡消火設備の規制内容・含有廃棄物の種類

 PFOS泡消火薬剤を含有する泡消火設備は現在規制によって製造がなされておりません。

 ここでは化審法によって規制対象となった化合物PFOSの廃棄処理に関する規制概要とPFOS含有廃棄物の種類、及び現在使用中の泡消火薬剤・消火器用消火薬剤の扱いについて確認します。

◆PFOSが残留性有機汚染物質に認定された背景

 泡消火設備や消火器等、PFOS泡消火薬剤を含有する消防設備の使用に関する規制が「化審法」によって施行されたのは平成22年じゃ。

 このPFOSとは完全フッ素化された直鎖アルキル基を有するスルホン酸であるペルフルオロオクタンスルホン酸の略称で「ピーフォス」と呼ばれておる。

 PFOSの規制が検討に入ったのは残留性有機汚染物質の扱いに関する世界的な注目が集まりつつある中で平成21年に開催されたストックホルム条約によるものじゃ。

 PFOS自体は表面張力を軽減させる有能な界面活性剤として様々な分野で使用されておる化合物じゃ。

 しかし、化合物の化学構造が安定した構造であることから廃棄されたPFOSの自然界での分解処理が困難であることが懸念され残留性有機汚染物質として国際的に規制されるようになった背景があるのじゃな。

◆主なPFOS含有廃棄物の種類と対象排出事業者の種類

 PFOSを含有する規制については平成22年より既に規制が施行されており、現在はPFOS含有泡消火薬剤の製造は全て禁止されておる。

 但し、過去に製造されたPFOS含有泡消火薬剤に関しては段階的に処分される事が認められており、現在設置されておるPFOS含有の消防設備に関しては火災発生時に限り、その使用も認められておる点がポイントじゃ。

 尚、PFOS含有廃棄物として規制される主な4製品は、泡消火設備の他、半導体用のレジスト、エッチング剤(エッチング液)、写真のフィルムなどが規制対象に含まれておる。

 主なPFOS含有廃棄物の種類と対象排出事業者の種類は以下のとおりじゃ。

PFOS含有廃棄物の種類(泡消火薬剤・消火器用消火薬剤)
番号 主な区分 排出事業者
@ 泡消火設備 設備所有者・点検業者・解体業者・消防機関等
A 消火器 機器所有者・点検業者・消防機関等
B パッケージ用消火設備等 設備所有者・点検業者・解体業者・消防機関等

 泡消火薬剤のPFOS含有廃棄物の種類は汚泥・廃酸・廃アルカリに分類される。

PFOS含有廃棄物の種類(半導体用のレジスト)
番号 主な区分 排出事業者
@ ライン残・洗浄溶剤・充填時ロス レジストメーカ
A 廃レジスト液 半導体メーカ
B 廃現像液
C 剥離工程排水

 半導体用のレジストのPFOS含有廃棄物の種類は廃プラスチックや廃酸・廃アルカリに分類される。

PFOS含有廃棄物の種類(エッチング剤)
番号 主な区分 排出事業者
@ 廃エッチング液 半導体メーカ
A 洗浄排水

 エッチング剤のPFOS含有廃棄物の種類は廃酸・廃アルカリに分類される。

PFOS含有廃棄物の種類(業務用写真フィルム)
番号 主な区分 排出事業者
@ 廃フィルム 製造メーカ・現像処理業者・エンドユーザ
A 製造廃液 製造メーカ
B 廃現像液・定着液 現像処理業者・エンドユーザ
C 現像済フィルム

 業務用写真フィルムのPFOS含有廃棄物の種類は廃プラスチックや廃酸・廃アルカリに分類される。

◆POPs条約の対象物質・PFOS含有消火薬剤の制限について

 残留性有機汚染物質の取り扱いに関する国際会議ストックホルム条約締約国会では国際的な規制対象物質の取り決めが行われております。

 ここではストックホルム条約で制定された12種類の対象物質と条約に基づく消防法の改正項目について解説します。

◆PFOS規制の背景となるストックホルム条約について

 PFOS含有消火薬剤に関する規制項目が制定された背景となっている残留性有機汚染物質(POPs)に関する規制条約が制定されたのは、前項でも解説した通りストックホルム条約がその背景にある。

 POPsとは(Persistent Organic Pollutants)の略称で残留性有機汚染物質の事を指しており、本条約はPOPs条約とも呼ばれておるのじゃ。

 尚、POPs条約で締結された残留性有機汚染物質の規制内容はポリ塩化ビフェニル(PCB)、ダイオキシン類、クロルデン、DDTなどの長期的に残留する可能性を持つ環境に悪影響を及ぼすとされる薬剤や農薬類などの製造や使用・輸入・輸出の禁止となっておるのじゃ。

◆残留性有機汚染物質(POPs)の定義

 POPs条約によって規制される対象物質は広域に渡るがここでストックホルム条約の定義について確認しておくとしよう。

 ストックホルム条約の規制対象物質は以下の定義に該当するかどうかが本条約の判断の基準となっておる。

ストックホルム条約の定義(POPs)
番号 特性 基準
@ 毒性 人の健康・環境に対して悪影響・有害性が認められる
A 蓄積性 生物の生体内へ蓄積しやすい・食物連鎖による汚染物質の蓄積の可能性が認められる
B 難分解性 環境中で分解が困難である
C 長距離移動性 国境を超えて長距離移動する可能性が認められる(大気・水・渡り鳥など)

 ピーフォス(PFOS)に関する規制は第4回ストックホルム条約締約国会において上述した定義に該当する成分として議題に上がり、日本国では化審法によって今後の製造に関する規制や使用方法、点検、薬剤の混合について新たな規定を設けておるのじゃ。

◆ストックホルム条約によって規制される対象物質の種類

 ストックホルム条約の規制対象物質は前述した条約の定義に該当する物質が掲げられておる。

 製造及び使用が禁止となった成分としては農薬としても広く使用されておる殺虫剤成分のクロルデン・ヘキサクロロベンゼン・アルドリン・エンドリン・トキサフェンなどが対象物質となっておる。

 またPCB、ダイオキシン類やDDTに関しては使用の制限、製造技術に関する規制がなされておる点もポイントじゃ。

 尚、ストックホルム条約にて規制の対象物質と規定された種類は以下の12種類の対象物質が挙げられておる。

ストックホルム条約の対象物質
番号 内容 種類
@ 製造・使用の禁止 アルドリン・ディルドリン・エンドリン・クロルデン・ヘプタクロル・トキサフェン・マイレックス・ヘキサクロロベンゼン・、PCB(絶縁油・熱媒体等)
A 製造・使用の制限 DDT(殺虫剤)
B 排出削減 ダイオキシン類・ジベンゾフラン類・ヘキサクロロベンゼン・PCB(ポリ塩化ビフェニル)

◆泡消火設備の点検基準の改正(但し書きの追記)

 ストックホルム条約の条項を考慮し日本ではPFOS含有薬剤に関する規定として化審法による規制概要が施行されておる。

 また消防法でもPFOSを含有する泡消火薬剤の点検基準・混合薬剤の使用に関してストックホルム条約を踏まえた改正法が発表されておるのじゃ。

 尚、泡消火設備の点検基準に関する消防法に基づく改正では、総合点検の項に以下の但し書きが追加されておるのでチェックしておくことじゃ。

(a)低発泡を用いるもの
全放射区画数の20%以上の数の区画において水により放射を行い、分布及び放射圧力が適正であるとともに、当該放射区画のうち、加圧送水装置から最遠の区画において泡放射を行い、混合率及び発泡倍率が適正であること。
(改正後に追記された但し書きは以下の文)
ただし、ペルフルオロ(オクタン−1−スルホン酸)又はその塩を含有する消火薬剤を使用する泡消火設備であって、消火薬剤の機能を維持するための措置が講じられている場合はこの限りでない。

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