非常用進入口の設置基準・開口部の寸法・設置範囲の解説

消防用の非常用進入口の設置規定、開口部の寸法・サイズの基準、設置範囲の解説。

◆非常用進入口の設置基準・開口部の寸法・設置範囲の解説

非常用進入口の設置基準規定は消防法、建築基準法により対象となる建築物に関し一定の広さが確保された開口部を設けることが義務付けられておる。

ここでは消防用の非常用進入口の設置規定、開口部の寸法・サイズの基準、設置範囲など非常用進入口に関する法的規定をチェックしていくとしよう。

非常用進入口は火災などが発生した際に外部から消防隊員が容易に侵入できることを目的として設けられる開口部であるため円滑に消火活動が行えるように配慮された設置基準が定められておるのじゃよ。

◆非常用進入口とは?

非常用進入口とは、その名前の通り火災や地震等によって災害が発生した際に消防救助活動を円滑に行うことが出来るように設けられる進入口のこと。

原則道路など通行が可能な外壁面に面する位置に非常用進入口を設置することが義務付けられている。

◆赤色灯と▽マークが目印

非常用進入口は意識してみてみると多くの建物に設置されているのがよくわかる。

しかし、普段はあまり意識することが無く、また非常用進入口であっても「代替進入口」が多い為、実際に目に留めることは少ないかもしれない。

小規模の商業用ビルなどの建築物等の場合はよく見ると3階以上の階層にちらほらと見つけることができる。

小ぶりな長方形の窓に下向きの三角形マーク(赤色)がある扉が非常用進入口の目印。

扉のすぐ上には「赤色灯」が設置されている。

◆非常用進入口の設置位置と設置義務

非常用進入口の設置基準は、以下のように定められている。

実際に火災などが発生した非常時に消防隊員が「容易に進入できること」が最低限の設置条件としてあげられる。

【非常用進入口の設置位置と設置義務】
★設置範囲:3階以上の階層(高さ31M以下の部分)
★設置間隔:対象となる建築物の外壁40M間隔(40M以内であれば良い)
★設置条件:幅員(歩道や通路も含む)4M以上の道路や通路に面する各階の外壁面に設置

◆FIX窓や網入り耐火強化ガラスを使用しても検査に通る?

3階建て戸建て住宅の建築の設計を行う場面。道路面に面する居室部分の3階の壁面に非常用進入口を設置する。

この際、3階と言えども防犯上の不安が残る為、窓はFIX窓を使用。

防火対策も兼ねて筋入りガラスのFIX窓とした。

FIX窓は非常用進入口として適さないと言われるが非常用進入口としての認定が降りるだろうか?

◆防犯に関わる相反する問題点

※答え:問題なし(但し厚さによる)

非常用進入口を設置する場面でどうしても悩む問題のひとつが防犯上の問題と消防隊員が容易に侵入できるように柵や格子をつけてはいけないという相反する問題がある点。

3階建て戸建て住宅の場合は特にこの問題がテーマとなる。

尚、FIX窓の設置は認定されないという話も聞くがそんなことは全くなく、非常用進入口をFIXで対応すること自体は何ら問題ない。

◆網入り強化ガラスでガラス厚が6mm以上の場合

但しFix窓で使用するガラスの厚みが極端に厚いガラスである場合や、耐火性能をもつ網入り強化ガラスでガラス厚が6mm以上の場合は別。また非常用進入口が最低基準のサイズを満たしていない場合はさすがに検査に通らない。(通常は)

尚、検査の厳しさは役所や地域、また対象となる物件を管轄する消防署によっても異なるのも実情である。

◆バルコニーのサイズ・寸法規定

3階建ての戸建ての場合の多くはバルコニー部分に非常用進入口を設置する。

バルコニーのサイズの規定は「奥行きが1M以上」であること。

更に「横幅は4M以上」のバルコニーとすることが定められている。

※Point!非常用進入口を設置するバルコニーは奥行き1M以上、幅4M以上とすること

また非常用進入口には原則として赤色の進入路を示す▽シールと窓の上に赤色灯を設置することが義務付けられている。

しかしご存知のように現実的にはこの規定を守っていない建築物も多いこともまた事実である。

◆非常用進入口を設けなくても良い3つのケースとは?

31M以下の部分~3階以上の階層に関しては原則として上記表の構造規定を満たした非常用進入口を設置することが義務付けられている。

では、この規定は特に人が頻繁に出入りすることもなく火災も発生しにくい不燃物などを保管している物置程度にしか使用していないようなフロアでも設置が必要なのだろうか?

◆燃えにくい材質でできているフロア

※答え:必要ない

非常用進入口の規定では燃えにくい材質で出来ている不燃物などの物品を保管するだけの為のフロアの場合に関しては非常用進入口を設置しなくてもよいと定めている。

これは火災の発生源となりにくいと判断される為。

但し、非常用進入口を設けないフロアの1つ上の階のフロア、もしくは1つ下の階のフロアに非常用進入口があることが条件。

◆設置義務が免除されるケースは3つ

非常用進入口を設置しなくても良いケースは、前項の不燃物の保管フロアの他にも幾つかの緩和措置が講じられている。

ひとつは、「非常用エレベーター」を設置したケース。

非常用のエレベーターを既に設置している場合は、別途非常用進入口を設置する義務がない。

また非常用進入口に変わる窓や開口部を「10M以内の間隔」で設置している場合も設置義務が免れる。

【設置義務が免除されるケースは3つ】
★不燃物などの保管フロア
★非常用エレベーター(昇降機)が設置されている建築物
★代替進入口の規定を満たす開口部がある場合

◆非常用進入口の構造規定5つのポイント

非常用進入口として設置される開口部の構造は建築基準法で明確に定められている。

ここでは一目でチェックできる一覧表にまとめてみた。

◆開口部の構造のポイントは5つ

建築基準法では非常用進入口の構造に関する規定が定められている。

進入口の大きさ、バルコニーのサイズ、開口部の構造、非常用進入口としての表示、床面からの高さが主な基準。

【非常用進入口の構造に関する規定】
項目 規定
①進入口の大きさ 原則幅75cm以上、高さ120cm以上の進入口であること
②バルコニーのサイズ 奥行きが100cm以上、幅400cm以上であること
③開口部の構造 ②の寸法を満たすバルコニーを設置すること
④非常用進入口の表示 直径10cm以上の赤色灯及び1辺が20cmの正三角形で表示すること
⑤床面からの高さ 開口部の下端部分から80cm以内の距離に床面があること