泡消火設備の設置基準概要の解説

泡消火設備の用途と構造の特徴、設置に関する消防法に基づく設置基準規定、泡消火薬剤PFOS規制の解説。

◆POPs条約の対象物質・PFOS含有消火薬剤の制限について

残留性有機汚染物質の取り扱いに関する国際会議ストックホルム条約締約国会では国際的な規制対象物質の取り決めが行われております。

ここではストックホルム条約で制定された12種類の対象物質と条約に基づく消防法の改正項目について解説します。

1.PFOS規制の背景となるストックホルム条約について
2.残留性有機汚染物質(POPs)の定義
3.ストックホルム条約によって規制される対象物質の種類
4.泡消火設備の点検基準の改正(但し書きの追記)

◆PFOS規制の背景となるストックホルム条約について

PFOS含有消火薬剤に関する規制項目が制定された背景となっている残留性有機汚染物質(POPs)に関する規制条約が制定されたのは、前項でも解説した通りストックホルム条約がその背景にある。

POPsとは(Persistent Organic Pollutants)の略称で残留性有機汚染物質の事を指しており、本条約はPOPs条約とも呼ばれておるのじゃ。

尚、POPs条約で締結された残留性有機汚染物質の規制内容はポリ塩化ビフェニル(PCB)、ダイオキシン類、クロルデン、DDTなどの長期的に残留する可能性を持つ環境に悪影響を及ぼすとされる薬剤や農薬類などの製造や使用・輸入・輸出の禁止となっておるのじゃ。

◆残留性有機汚染物質(POPs)の定義

POPs条約によって規制される対象物質は広域に渡るがここでストックホルム条約の定義について確認しておくとしよう。

ストックホルム条約の規制対象物質は以下の定義に該当するかどうかが本条約の判断の基準となっておる。

ストックホルム条約の定義(POPs)
番号 特性 基準
毒性 人の健康・環境に対して悪影響・有害性が認められる
蓄積性 生物の生体内へ蓄積しやすい・食物連鎖による汚染物質の蓄積の可能性が認められる
難分解性 環境中で分解が困難である
長距離移動性 国境を超えて長距離移動する可能性が認められる(大気・水・渡り鳥など)

ピーフォス(PFOS)に関する規制は第4回ストックホルム条約締約国会において上述した定義に該当する成分として議題に上がり、日本国では化審法によって今後の製造に関する規制や使用方法、点検、薬剤の混合について新たな規定を設けておるのじゃ。

◆ストックホルム条約によって規制される対象物質の種類

ストックホルム条約の規制対象物質は前述した条約の定義に該当する物質が掲げられておる。

製造及び使用が禁止となった成分としては農薬としても広く使用されておる殺虫剤成分のクロルデン・ヘキサクロロベンゼン・アルドリン・エンドリン・トキサフェンなどが対象物質となっておる。

またPCB、ダイオキシン類やDDTに関しては使用の制限、製造技術に関する規制がなされておる点もポイントじゃ。

尚、ストックホルム条約にて規制の対象物質と規定された種類は以下の12種類の対象物質が挙げられておる。

ストックホルム条約の対象物質
番号 内容 種類
製造・使用の禁止 アルドリン・ディルドリン・エンドリン・クロルデン・ヘプタクロル・トキサフェン・マイレックス・ヘキサクロロベンゼン・、PCB(絶縁油・熱媒体等)
製造・使用の制限 DDT(殺虫剤)
排出削減 ダイオキシン類・ジベンゾフラン類・ヘキサクロロベンゼン・PCB(ポリ塩化ビフェニル)

◆泡消火設備の点検基準の改正(但し書きの追記)

ストックホルム条約の条項を考慮し日本ではPFOS含有薬剤に関する規定として化審法による規制概要が施行されておる。

また消防法でもPFOSを含有する泡消火薬剤の点検基準・混合薬剤の使用に関してストックホルム条約を踏まえた改正法が発表されておるのじゃ。

尚、泡消火設備の点検基準に関する消防法に基づく改正では、総合点検の項に以下の但し書きが追加されておるのでチェックしておくことじゃ。

(a)低発泡を用いるもの
全放射区画数の20%以上の数の区画において水により放射を行い、分布及び放射圧力が適正であるとともに、当該放射区画のうち、加圧送水装置から最遠の区画において泡放射を行い、混合率及び発泡倍率が適正であること。
(改正後に追記された但し書きは以下の文)
ただし、ペルフルオロ(オクタン-1-スルホン酸)又はその塩を含有する消火薬剤を使用する泡消火設備であって、消火薬剤の機能を維持するための措置が講じられている場合はこの限りでない。