瑕疵担保責任期間・損害賠償範囲の解説

宅建業法(民法)に基づく新築住宅・中古住宅・土地・リフォームの瑕疵担保責任期間・損害賠償範囲の解説。

◆民法に基づく瑕疵担保責任期間の解説

瑕疵担保責任とは、民法で定められた不動産売買に関する住宅の瑕疵に対する取り決めの事じゃ。

具体的には不動産売買に関する「宅地建物取引業法」に基づく瑕疵担保責任の瑕疵(かし)とは、物件の引渡し時に知り得る事が出来なかった不備及び欠陥の事を指すのじゃ。

瑕疵担保責任は、その売買形式によって瑕疵担保責任を追及できる期間が定められておる点がポイントとなるのじゃよ。

◆中古住宅・中古物件の瑕疵担保責任期間と権利の履行について

中古住宅と新築住宅の瑕疵担保責任の範囲は大きく異なる。

また躯体の基礎となる構造部分、建物の設備となる部分など瑕疵担保責任の範囲は同じ建築物でも場所や設備によっても異なってくる。

ここでは中古住宅の瑕疵担保責任期間と権利の履行手順、新築住宅の10年保証の成り立ちについてチェックしていこう。

◆中古住宅・中古物件の瑕疵担保責任期間について

中古住宅・中古物件の売買における瑕疵担保責任期間は民法によって物件の引渡し後2ヶ月以内と定められておる。

尚、この瑕疵として認められる基準としては
●隠された瑕疵
●常識的な範囲にもかかわらず認識していなかった瑕疵
 など引渡し時において売る側の個人が瑕疵を把握していたにも関わらずその瑕疵を隠蔽していたケース。

そして、双方の認識不足ではあるが常識的な範囲の瑕疵が発見されたケースなどじゃ。

上記に該当すると認定される瑕疵が発見された場合は売買契約書に基づく瑕疵担保責任の履行を行なうことが可能となるわけじゃ。

※中古住宅・中古物件の売買の瑕疵担保責任期間は原則2ヶ月

◆売主が宅地建物取引業者の場合の瑕疵担保責任期間は原則2年

中古住宅の瑕疵担保責任期間は原則2ヶ月が基準となっておるが、もし売主が個人ではなく不動産業者の場合についてチェックしておくとしよう。

売主が不動産業者(宅地建物取引業者)の場合とは、以前の持ち主から家を買い取り所有権が不動産業者となっている物件が対象となる。

よくあるケースとしては競売などで不動産業者が物件を購入しリフォームを施した上で販売をかけるようなケースが多いのぉ。

このように不動産取引を生業とする宅地建物取引業者が中古住宅の売主となっているようなケースでは、個人の場合と異なり瑕疵担保責任期間が2年に延長されることになっておる。

※売主が宅地建物取引業者の場合の瑕疵担保責任期間は2年間

一般的に築年数がかなり経過している不動産物件の売買を行なうようなケースではある程度の瑕疵があることは想定されるため、建物部分に関する瑕疵に関しては特約として「瑕疵担保責任を負わないこととする」という一文を加えているケースが多いものじゃ。

しかし、売主が宅地建物取引業者である場合に関しては、このような特約も認められず瑕疵の状況によって民法に則り瑕疵担保責任・損害賠償の範囲が検討されることになるのじゃ。

※売主が宅地建物取引業者の場合は「瑕疵担保責任を負わない」とする特約は無効とする

◆物件引渡し後2ヶ月以内に発見された瑕疵について

中古物件の売買契約が行われ、登記簿謄本上の所有権者も購入者へ移り物件の引渡しが行われた場合について確認しておくとしよう。

中古物件の瑕疵担保責任期間は契約書に別途特約条項などを設けない限り、原則として2ヶ月以内(売主が宅地建物取引業者の場合は2年)となっておるのは前述した通りじゃ。

もし物件引き渡し後2ヶ月以内に瑕疵が発見された場合は、

①まず売主に現状の確認(立会い)
②売主に瑕疵の修繕の費用請求

以上の順序で瑕疵担保責任の権利を履行することが認められておるのじゃよ。

◆瑕疵担保責任と品確法(豆知識)

瑕疵担保責任は、その売買形式によって瑕疵担保責任を追及できる期間が定められておる。

この瑕疵担保責任期間内においては、
●損害賠償請求
●契約解除請求
 などの請求権が購入者には認められておる。

しかし、以前はこの瑕疵担保責任に対して「特約」を設ける事で瑕疵担保責任期間を意図的に短縮する売買契約が数多く執り行われてきた歴史がある。

もちろんその全てが悪意のある特約とは限らんのじゃが一般的に不動産業者に対して、不動産知識の乏しい一般の不動産購入者を保護する必要性が出てきた訳じゃ。

そこで、新築物件の建築の場合は建築の基本構造部分に関し「品確法」の制定をもとに10年保障が義務付けられるようになったのじゃよ。

◆雨漏り・シロアリによる中古住宅の瑕疵担保責任の効力範囲

中古住宅の瑕疵担保責任期間は原則2ヶ月として認められている。

しかし現実的にはどの程度の瑕疵が瑕疵担保責任の効力が及ぶ範囲として認められるのだろうか?

ここでは代表的な中古物件の瑕疵とシロアリ被害、雨水の侵入などの雨漏り問題について確認していこう。

◆中古住宅の売主が負う瑕疵担保責任の範囲

中古住宅の売買を行なう場合は購入者側だけではなく売主側も瑕疵担保責任についてしっかりとした知識を身に着けておく事が重要じゃ。

特に瑕疵担保責任の適用範囲として定められておる幾つかの項目に関しては売主側に例え悪意などはなくとも瑕疵担保責任が問われることになるためじゃ。

中古住宅の売主が負う瑕疵担保責任の範囲は基本的に以下のような瑕疵が発見された際に対象となるのじゃ。

【中古住宅の瑕疵として認められる主な種類】
★雨漏り
★シロアリ
★建物の構造上主要な部位の木部の腐食
★給排水設備の故障

これらの瑕疵が発見された場合は、売主は瑕疵担保責任期間内においては、売主の費用負担で瑕疵を修繕する義務を負うことになるのじゃよ。

◆瑕疵担保責任は売買契約書に記載

瑕疵担保責任の範囲の項目に関しては売買を執り行う際の「売買契約書」もしくは「重要事項説明書」に記載されておる。

書面には瑕疵担保責任と記載されている項目をしっかり確認しておく事じゃ。

特に個人間で行われる中古物件の売買に関しては瑕疵担保責任の範囲を明確に定めておく必要があるじゃろう。

◆中古住宅の雨漏り・シロアリは修繕後でも悪意はなくとも瑕疵として認められる

中古住宅物件の売買において、最も注意しておきたい点が
●雨漏り
●シロアリ
 などの瑕疵の問題じゃ。

前述したとおり、雨漏り、及びシロアリによる害に関しては瑕疵担保責任範囲として具体的に認められておる項目じゃ。

売主側が、過去に一度でも雨漏りやシロアリの害を被った経緯があるのであれば、これらの事実を事前に説明しておく事が大切となってくる。

これは、例え既に修繕を終えている場合においても、かつ悪意はなくとも、瑕疵の隠蔽として捕らえられる可能性もある為じゃな。

その為、売主側としては雨漏り・シロアリ被害の有無に関しては売買を行う前にしっかり確認を行なっておくことが必要じゃ。

※中古住宅の雨漏り・シロアリは修繕後でも悪意はなくとも瑕疵として認められる為、中古物件の売買契約の際は要確認

◆中古物件の雨漏り・シロアリの瑕疵担保責任の効力範囲について

購入者側としては、雨漏り・シロアリの害に関して「どの程度まで瑕疵担保責任の効力が及ぶのか?」という責任範囲についてもしっかりと把握した上で中古物件の売買契約をとり行うことが重要となってくるのお。

例えば、雨漏りの場合は、一般的に考えられる「屋根部分からの雨漏り」に限らず、
●外壁部分からの浸水
●サッシ部分からの雨水の吹き込み
 なども瑕疵担保責任の範囲として認められておる。

またシロアリに関しては、
 「シロアリの被害が建物本体に確認されるかどうか?」
 という点が瑕疵担保責任範囲の判別の規準となっておる。

例えば庭の植木にシロアリを確認したとしても建物本体にシロアリを確認できない限り、瑕疵担保責任を履行するのが困難となるケースもある事を把握しておくことが大切じゃ。

◆瑕疵担保責任の修繕費用の請求範囲と売主・買主の現場立ち会いのポイント

中古住宅の売買契約を行った後に瑕疵が発見された場合は必ず瑕疵部分の確認を行なうために売主・買主双方の立ち会いが必要となる。

ここでは売主と買主が瑕疵部分の確認を行う前のポイントと瑕疵担保責任が履行された場合の修繕費用の請求範囲について確認していくとしよう。

◆中古住宅の瑕疵が発見された場合の注意点について

中古住宅の物件引渡し後、瑕疵担保責任期間内(原則2ヶ月以内)においてもし瑕疵を確認した場合。

このようなケースはあって欲しくないケースではあるが、もし瑕疵が発見されたケースについての具体的な行動指針と損害賠償の範囲について説明するとしよう。

まず、前項で解説したような中古住宅の瑕疵として認められる範囲内と想定される瑕疵を確認した場合は、前述したとおり売主に現状の確認をしてもらう事が何よりも大切じゃ。

しかし、この立ち会いを行なう際には幾つかの注意点がある。

まず一つ目のポイントは、絶対に個人間同士のみで立ち会いを行わないことじゃ。

中古物件の売主は個人、もしくは競売などで物件を入手しリフォーム販売をしているような建築業者が多い。

売主が個人の場合はおそらく売買契約を仲介業者を通して行っておるはずじゃから、契約を行った仲介業者に連絡を取り現状を報告しておくことが大切じゃ。

売主へ直接連絡を行う前に第三者に確認をしてもらうことで期日を明確にできる利点や、瑕疵に範囲に該当するかどうか?といったアドバイスを受けることも可能となる。

実際に瑕疵担保責任の範囲に該当するかどうかといった判断は難しいため、第三者を通しておくことが重要になってくるのじゃな。

※売主と現場立ち会いを行う前に第三者に確認してもらうこと

不動産の仲介業者とは、不動産物件の販売に関わる広告打ちや現地販売などでの営業活動を行い、契約に至った場合に手数料を受け取る事を商売としておる不動産業者のことじゃ。

一般的に広く知られておる不動産仲介業者としては、「三井のリハウス」「住友不動産」などがあるのぉ。

仲介業者は中古物件の売買契約業務までを行なっておる為、まずは個人間で連絡を取らずに仲介業者に状況を報告するようにしておくと良いじゃろう。

これは売主が個人の場合だけでなく不動産業者(宅地建物取引業者)が売主の場合も同様じゃ。

仲介業者を通して売買を行った場合は、基本的に売主との立ち会い前に確認をしてもらい、実際の立ち会い日も第三者として入ってもらうようにしておくと良いじゃろう。

◆売主が宅地建物取引業者の場合のポイント

次に中古住宅の売主が不動産業者で仲介業者などを一切通さずに売買契約を行ったケースについてもチェックしておくとしよう。

このように売主が不動産業者の場合は売買契約までを一貫して一社で行なうケースが大半のケースじゃ。

この場合は、まず知人の不動産関係者などに相談し現場を一度見てもらうようにしておくと良いじゃろう。

もし知人などがいないようなケースでは一度、建築関係に強い弁護士に相談してみるのもひとつの方法じゃ。

瑕疵にあたる部分が本当に瑕疵と言えるかどうかの判定にはなかなか難しい部分もある。

その為、実際に似たようなケースであっても瑕疵担保責任に関する判例が異なるケースも多いため専門知識を持っている方に事前に確認してもらうようにしておくことが大切なのじゃな。

◆修繕費用以上の費用は請求出来ない

発見された瑕疵に該当する部分が瑕疵担保責任の範囲内であるかどうかの確認を行い、実際に瑕疵担保責任を負う必要があると認められた場合の瑕疵の補修・修繕にかかる費用についてもチェックしておこう。

仲介業者などの不動産業者を介していない売買契約を行なっている場合は、瑕疵担保責任の効力範囲を明確にする上でも前述した通り弁護士や土地家屋調査士など専門の者に資金を支払ってでも立ち会ってもらう事が大切じゃ。

これは大規模な修繕が必要となるケースでは想像以上の修繕費用の請求を受ける可能性もある為じゃ。

特に雨漏りやシロアリ被害に関する瑕疵に関しては、建築物の躯体そのものに支障をきたし耐震性能の低下や建築物の崩壊の危険性も考えられるため大規模な工事が必要になるケースも多いものじゃ。

尚、中古物件の売買における瑕疵担保責任では、瑕疵に対する修繕費用に対して売主にその費用を請求できる事となっておる。

じゃから、修繕費用以上の費用を請求したり損害賠償を請求することは認められておらん点もしっかり把握しておく事が大切じゃ。

※瑕疵の修繕にかかる費用は売主に請求が可能

尚、瑕疵の有無によって締結されている契約を解除することは認められておらんのじゃよ。

中古物件の売買については、これらの点を売買前に確認しておく事が重要となるのぉ。